スポーツ障がい

肘離脱生骨軟骨炎

主に小学校高学年から中学生に生ずる骨軟骨障がい。野球選手、特に投手に生ずることが多いです。
繰り返す投球動作によって肘の外側に圧迫力とせん断(ずれようとする)力がかかり、軟骨下骨の壊死が生じることが原因です。ひどくなると上腕骨小頭という部分の骨軟骨が剥がれ落ち、いわゆる関節ねずみ(関節遊離体)になってしまうものである。
主な症状は投球時肘外側痛と可動域制限(特に伸展制限)が多いです。関節ねずみとなってしまった場合はロッキング(ひっかかり、肘を動かせなくなる)症状を呈することもあります。確定診断にはレントゲン写真やCT、MRIなどが用いられます。
治療は病期により異なります。初期の場合は基本的に投球を禁止し、半年から1年くらいの期間レントゲン写真や症状の経過を観察します。
投球していなくても進行してしまう場合もあり、また進行した状態で病院を受診した場合手術治療が必要となることが多いです。
現在主に行われている手術には骨釘移植法(肘の一部から骨を細い釘のように採取して病変部に打ち込み剥離した骨片を固定する)、同様に吸収性素材で骨片を固定する、上腕骨外顆楔状骨切術(病変部に圧迫力がかからないように外側の部分を楔状に切り取る方法)など病巣部を温存する方法と病巣切除法、肋軟骨移植法、骨軟骨柱移植法など病巣を温存できないときに行われる方法があります。
いずれも一長一短があり、本人や家族と十分に話し合ってから治療法を決定することになります。
この障がいは基本的に投げすぎによって生ずることが多いため、予防には投球数を制限することが必要となります。
目安としては小学生では一日50球以内、週200球以内、中学生では一日70球以内、週350球以内が望ましいです。

肘頭骨端閉鎖不全・肘頭疲労骨折

肘の部分のいわゆる成長帯が普通自然に閉鎖するものが閉鎖できずに痛みを生じたり(肘頭骨端(線)閉鎖不全)、疲労骨折を起こす障がい。繰り返す投球により生じることが多く、肘を伸ばす筋肉による牽引力など肘部に繰り返し負荷がかかることによって生じます。
主な症状は投球時痛や局所の圧痛です。 確定診断にはレントゲン写真や断層撮影、CTなどが用いられます。
初期の場合これらの検査では異常が見られず、骨シンチグラフィーやMRIなどによって診断されることもあります。
治療は基本的に安静で3ヶ月~6ヶ月程度でスポーツ復帰が可能になることが多いです。
しかしながら、難治例では手術が必要になり、骨移植をし、プレートやスクリューなどで固定することが多いです。

内側型野球肘

野球肘で内側痛を呈するものには主に上腕骨内上顆炎、内側側副靭帯損傷、内側上顆剥離骨折、肘部管症候群などがあります。
手術は神経の圧迫を除去し、同神経を前方に移行する尺骨神経皮下前方移行(所)術が一般的ですが、筋層下移行術(いったん筋肉を切開しその下層に移行する手術)や肘部管形成術(もともと神経のある部分の骨を削り溝を深くして、神経が前方に脱臼しないようにする手術)という方法もあります。

上腕骨内上顆炎

主に屈筋や回内筋群が付着する内上顆部(肘の前内側)の炎症で同部位の痛みを呈します。
使いすぎが主な原因で、局所安静が原則となり、急性期が過ぎたら温熱療法やストレッチングを中心に行うのが良いです。

内側側副靭帯損傷

投球などによる外反ストレスの繰り返しや一度の外力により内側の支持機構である内側側副靭帯の破綻が生じた状態です。損傷の程度により、3週程度の固定後筋力訓練を行うことにより競技復帰が可能な場合もあれば、手術的治療が必要となることもあります。手術が必要な場合は単純に縫合することは困難で、靭帯再建を要することが多いです。

内側上顆剥離骨折

外反ストレスの繰り返しや一度の外力により内側側副靭帯損傷の付着部である内側上顆の剥離骨折を起こした状態です。骨端(線)閉鎖以前の小学生高学年児に多く見られ、4週間程度の安静やギプス固定で骨癒合が認められることが多く、手術が必要になることは少ないです。
しかし、高校生以上ではすでに陳旧例になっており、靭帯再建など手術的治療を必要とすることが多いです。

肘部管症候群

投球時の肘の外反による尺骨神経(肘の後内側にある)の牽引や同神経の脱臼による神経炎やその周囲の炎症、同神経が尺側手根屈筋内に入り込む部分での圧迫により発症する尺骨神経の障がいです。
この障がい(神経麻痺)が起こると、投球時に肘内側痛を生じたり、投球を続けていると徐々に握力の低下や指(特に薬指や小指)の痺れを生じる。日常生活には支障のないことが多いが、投球が困難となります。
投球を制限するのが原則ですが、投球を再開して同じ症状が出現して投球が困難な場合手術的治療を要することもあります。

上腕骨外上顆炎

強くグリップする、雑巾を絞る、フライパンを持つなどの動作で肘の外側に強い痛みを感ずる疾患です。
30-50歳台に好発し、テニス肘とも呼ばれ、ラケットスポーツやゴルファーによく見られるが、キーパンチャーや事務職などキーボードをよく打つ人や主婦にも意外に多いです。
手関節や指の伸筋起始部の炎症が主因とされており、外上顆(肘外側の骨の出っ張り)から前腕部の圧痛や手関節背屈に抵抗すると肘外側に疼痛が誘発されます(Thomsen test)。
治療は安静や温熱療法や低周波療法、消炎鎮痛剤の投与、ストレッチングなどに加え、テニスエルボーバンドと呼ばれるバンドを装着することもあります。効果の薄いときはステロイドと呼ばれる薬の局所注射をすることもありますが、数回の注射で効果のないときは手術を含め他の治療法を考慮します。
いずれにしても以上のような治療法で症状が軽減しない場合、手術治療の対象となります。
手術は主病変部といわれている短橈側手根伸筋腱の変性部を切除し、外上顆の部分切除を併施します。
関節内に渇膜ひだと呼ばれるひだが存在しそれが肥大し、上腕骨や橈骨の関節軟骨の変性を引き起こしている場合はこれも切除します。
他に短橈側手根伸筋腱の延長術、外上顆部骨穿孔術など数種の手術が報告されていますが、いずれも関節内病変のない場合のみに有効と考えられています。

変形性肘関節症

肘の関節に、トゲのような骨の突起(骨棘)ができるなどの変形がおこり、関節の動きが悪くなります。
骨折などが原因でおこるものと、年齢や労働が原因でおこるものとに分けられます。
肘は、体重などがかかったりする関節ではないので、症状がでにくいものです。
症状としては肘の曲げ伸ばしが十分にできず、そのときに痛みもおこります。変形がひどくなると、肘の内側にある尺骨神経(しゃっこつしんけい)を刺激するため、手の指がしびれたり、さわった感じが鈍くなったり、握力が低下したりします。
手のしびれがなければ、消炎鎮痛薬を内服したり、肘に負担がかかるような仕事をひかえます。
 しびれがあるときは、手術して、尺骨神経を圧迫している部分を除いたり、肘関節の動きを制限している骨棘を切除したりします。肘の変形がひどい場合は、人工関節に置き換える手術を行なうこともあります。

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