下肢疾患
当院では5名の下肢、股関節疾患担当医が勤務しています。
当院で手術的加療が行われている特徴的な疾患、また患者さんの多い疾患について記します。
外反母趾 (がいはんぼし)
外反母趾で来院される方をみると、年齢的に2つのピークがあります。ひとつは20代で仕事を始められたばかりの方。
もうひとつは、40~50代です。前者は比較的初期症状の方が多いのですが、後者では手術が必要になるまでに変形が進んでいる方が多いのが特徴です。
外反母趾は、進行の具合で大きく3つのステージに分けられます。ひとつは可逆期といい、変形が少ないのに親指の付け根が赤くなる、痛むといった初期の段階です。この時期には、ストレッチや靴を変えることで症状は治りますが、これが進むと元には戻らない非可逆期に入ります。拘縮期といって、親指の付け根が突出してくるなど骨が変形し、靭帯も縮んでしまいます。
さらに進行期に入ってしまうと、靴を履かなくても指が曲がっていき、痛むようになります。
最終的には親指が第二趾の下にもぐりこんだオーバーラップと呼ばれる状態になってしまいます。
外反母趾は、男性より女性に圧倒的に多く見られます。女性のほうが関節が柔らかく、筋肉も弱いことが理由のひとつにあげられますが、最も大きいな要因は靴です。ハイヒール病と呼ばれるほど、外反母趾と靴との関連性は高く、ハイヒールを履いている方では3~10倍罹患率は高くなります。特に立ち仕事をしている方や親指が第二趾より長い方はリスクが高いため、とことん靴にこだわるようにしてください。
靴を選ぶポイントは、先が尖っている、細いものは避け、スクエア型のものを選ぶこと。ヒールの高さは3cm以内にとどめること。土踏まずのアーチがしっかりしていることです。新しく買う際には、両足に履いて実際に歩いてみて前後にずれないかどうか確かめてください。むくみの出る夕方に購入されたほうがいいでしょう。
可逆期であれば床においたタオルを足の指で寄せ集めるタオルギャザリングやストレッチが有効です。何よりも「曲がり始めたらさらに曲がる」ことを忘れず、早期予防・診療を心がけていただきたいですね。
変形性膝関節症 (へんけいせいひざかんせつしょう)
ひざは太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間にある関節で、その前でお皿(膝蓋骨)と関節を作っています。変形性膝関節症とは関節の表面にある軟骨が加齢現象により徐々にすり減ってくる病気です。
治療方法としては、一般的には保存的治療(手術以外の方法)を試みます。
保存的治療には以下のものがあります。保存的治療の効果があまりないときには手術的治療を考えます。
- 適度の安静、減量
- 筋力訓練:膝関節周囲の筋、特に大腿四頭筋を強化
- 薬物療法:消炎鎮痛剤、外用薬
- 装具:足底楔型装具、膝関節支持装具
- 温熱療法:ホットパックなど
- 関節内注射:ヒアルロン酸製剤
半月板損傷 (はんげつばんそんしょう)
半月板には、膝のクッション機能、安定化作用があります。
半月板は体重がかかり屈曲した膝に異常な回旋力が加わると損傷を受けやすいです。
関節の中に水が伴うことがあります。
図のように、半月板の外周縁は血管で栄養しているが、内周縁は関節液で栄養されているので、内周縁で半月板が切れると半月板が治りづらく、半月板を切除することが多いです。
診断は、右のような徒手検査(膝伸展テスト、マックマレーテスト)で状態を確認し、半月板損傷が疑われるときはさらにMRI(核磁気共鳴機)などの精査をします。
保存的治療(安静、注射など)で治らない場合は手術を考えます。
前十字靭帯損傷 (ぜんじゅうじじんたいそんしょう)
前十字靭帯は図のように大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間に走っている靭帯です。脛骨が前にずれないように抑える作用があります。
前十字靭帯断裂が見過ごしたり放置していると、半月板や関節軟骨などの重要な部分に二次的な損傷を起こす可能性が高いと言われています。前十字靭帯が断裂して不安定感が残るような場合に手術的な治療を選択します。手術は自分の膝内側の膝を曲げる腱と人工靭帯を使用して行います。作り上げた靭帯を骨の中に穴を開けて通し、靭帯の両端を骨に固定します。